「水を飲むな」という教え

梅雨が明け、今年もまた猛暑が続く日々がやってきた。
私が中高生だった昭和の時代、この時期の部活の屋外練習は本当に嫌だった。「バテるので水は飲むな」というのが当時の教えだった。
さすがに今はもうこのような指導は無いとは思うが、何故私の学生時代はまだこのような指導が蔓延していたのだろう?
スマホもパソコンもまだ無かったが、人類が月着陸を実現する程に既に科学が発達していた当時、熱中症(という言葉はまだなかったが)を防ぐための科学的知見も充分得られていた筈である。
思い返せば昭和のその頃、スポーツの価値観は、巨人の星に代表される根性論が支配的だった。倒れるまでやる事が美徳であり途中で休んだり、水を飲むと「根性がないヤツ」と蔑まされる風潮があった。
どのレベルで身体が限界に達するかは個人差がある。指導者や先輩から「サボるな」と言われまい、仲間から馬鹿にされまい、と思う真面目な子ほど自分の限界を越えて頑張ろうとしてしまう。
今ようやく「適切に水分を補給せよ」との指導が普通になったのは、自分が選手の時に受けた教えや価値観に疑問を持ち、前提から見直した指導者が増えたからではなかろうか。
問題を解決するイノベーションに必要なのは、更なる科学の発展よりもむしろ、既に明らかな科学的事実を直視し今出来る事に真摯に取り組む姿勢なのだと思う。

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